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9.なりふり構わない意地悪令嬢に、ニセ嫁タジタジざまぁーす。 その6

作者: さぶれ
last update 最終更新日: 2025-06-24 20:01:45

「きゃあっ、止めてっ! いたいっ! いたぁーいっ!」

 むんずと掴まれた髪の毛が引きちぎられそうになったので必死に抵抗した。本気で痛い。なんなの、このご令嬢! 頭おかしいわよっ! どうかしている!!

 なりふり構わないにも程があるでしょーがああああ!

 痛みと衝撃で頭がクラクラしそうだったが、このままじゃ髪がなくなってしまう。本気で焦って、必死に抵抗したけれど、相手の力は想像以上に強かった。

「なんの騒ぎですか!」

 様子を見に来てくれた中松が、飛んできてくれた。

 やああーん。救世主―!  この時ばかりは、彼が鬼じゃなくて神に見えた。今だけ神松になった。

 中松が私と極悪令嬢の間に割って入り、彼女から引き剥がしてくれた。

「花蓮様、なにごとですか! 一矢様がお選びになられた女性に対して、このような仕打ちをなさるとは! 御父上にご報告させてもらいますよ!」

「あ、これはその……」

 花蓮様がオロオロと泣きそうな顔を見せた。「急に一矢様が婚約されると聞いて…幼い頃からお慕いしておりましたのに、ずっと、花蓮を選んで頂けるとそれを信じて今日まで生きてまいりました。それなのに…それなのに……」

 遂に彼女が泣き崩れた。酷い髪になり、ボロボロになった私の方が泣きたいよ! 一矢がロングヘアが好きという謎の情報を手に入れてから、一生懸命手入れしながら長く伸ばしていた髪が、この悪令嬢のお陰でブチブチと悲惨に引きちぎられたのよお――――っ!

 もおぉっ! ハゲたらどーしてくれるのよおおおお――――っ!!(涙)

「だからと言え、伊織様にこのような仕打ちは見過ごせません。さあ、行きましょう。きちんと一矢様にも報告させていただきますから」

「それだけはおやめください。どうかそれだけは……」

 ボロボロと泣きながら令嬢が私に向かって土下座してきた。「ごめんなさい、伊織様。貴女が羨ましくて…なんの家柄も無い貴女が選ばれたことが、妬ましくて……」

 正直な人ね。どうせ無血統ですよ。

「それ故、無礼を働いてしまいました。申しわけございません。どうか一矢様には言わないで……」

 はらはらと涙を流す姿を見て、なんだか可哀相になってきた。このお嬢様も一矢をずっと好いてきたのよね。それなのに、急に婚約者(しかもニセ)が出てきたら面白くないわよね。わかるよその気持ち。

「お顔をお上げになって」

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    「まあ…それでは、三成家が衰退してしまうのではないでしょうか? 花蓮なら一矢様を全面的に支え、今後ご活躍される一矢様のバックボーンとなることが出来ますのに」 庶民ですみませんね、って言いたいわぁ…。「花蓮、色々考えてくれてありがとう。しかしもう決めたことだ。家庭を持つ以上は、必ず自身の会社を大きくし、成功させる努力を惜しまない。しかし三条家の助けも必要だ。今後とも変わらず懇意にして欲しい。どうか、よろしく頼む」「一矢様…」 花蓮さんは目に涙を浮かべて、一矢を見つめた。「花蓮は、ずっと…幼い頃から、一矢様をお慕いしておりました」 あぁ…ごめんなさい…。あなたも一矢がほんとうに好きなのね。それなのに、偽装でごめんなさい。ニセだから胸が痛んだ。「花蓮の気持ちは嬉しいが、それは私が兄の様に接していたから、憧れに近いものがあったのだろう。お前は私にとって妹みたいな存在であったから、つい、兄の様に振舞ってしまったことは侘びよう。すまなかった。でも、花蓮は素晴らしいレディ―だ。私なんかよりも、もっとお前に相応しく素晴らしい男性に出会えるはずだ。見分を広めるといい。籠の中の鳥である必要は無い」 はあー。普段の一矢とはぜんぜん違う。 こんな一面もあるのね。すごく饒舌だわ。世間を渡り歩かなくてはいけないのだから、このくらいは朝飯前なのね。 ご令嬢を深く傷つけないように、しっかりとお断りするそのスマートさ。天晴よ。「解りました。一矢様のご結婚、祝福させていただきます。どうか、お幸せに」 花蓮さんが微笑んだ。本物の花の様に美しい。一矢によく似合っている。下品な私よりもずっと、お似合いだ。ニセ嫁を語って申し訳ない。「一矢様、わたくし、伊織様とお話してみたいわ。よろしくて?」 ご令嬢の目が鋭く光った。 ちょっと待って。これ…嫌な予感しか無いんだけど…。「伊織、どうだ? 花蓮と少し話してくれるか?」「はい、喜んで」 嫌とは言えずに微笑んだ。「花蓮のお部屋にいらして、伊織様。一矢様との思い出の写真が沢山ありますの。アルバム見ながらお喋りしましょう」 いーやーあー。 心の叫びとは裏腹に、速攻で部屋を連れ出されてしまった。跡が残るくらい強い力で腕を掴まれた。ゴテゴテのネイルを施した鋭い爪を立てられる。痛い…。 さあ、ご令嬢との対決――どうなる!?「こちら

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     厳しく鋭い目線を私へ向けていたが、こちらの目線に気が付いたのか、すっと奥へその感情を引っ込めた。もしかしたら…彼が一人娘を一矢にあてがうつもりで考えていたのなら、ぽっと出の私の存在は面白く無いだろう。中松の言うとおりだと思った。 修業中、中松に上流階級の醜い権力争いや思惑、令嬢のあしらい方などを様々叩き込まれた。  お陰で私をひと睨みした三条さんの考えがわかるようになったのだ。  今回、中松がスムーズな縁談になった経緯を説明するために、シナリオを立ててくれた。 身分を持たない庶民の私と一矢を結婚させるためには、私が一矢の幼馴染で、昔からお互いを思い合うからこそ婚約した、と、理由づけることにした。なんとも脆いシナリオだろうか。私は本当のことだれど、一矢はそうじゃないのに。「やあ、一矢君。よく来てくれたね。そちらのお嬢さんが噂のシンデレラガールかね?」 シンデレラガール…。まあ、そういう扱いなのは仕方ない。ニセ嫁とは思われていないわよね…?「辰雄(たつお)さん、彼女はシンデレラガールではありませんよ。私が本家と犬猿の仲だということはご存じでしょう。彼女は私が大変な思いをしている幼少期から今日(こんにち)まで、ずっと傍で支えてくれたのです。彼女以外、私は他の女性と結婚は考えておりませんでした」「そうか」 幾分納得のいかない顔を遠慮なく見せた彼の思惑が、私にも伝わってきた。  一矢を懇意にしていた本当の理由――それは、一人娘をあてがうために、今日まで一矢に取り入ろうと努力してきたのだ。それを、私が横からかっさらった。彼の中で私は悪の存在とも言えよう。   「それより私の妻となる女性を紹介しましょう。まだ正式ではありませんが、辰雄さんにはいち早く知らせておこうと思った次第です」 一矢は愛想笑いを浮かべたまま、挨拶を続ける。「伊織、こちらが三条辰雄さんだ。ずっと三成と懇意にして下さっている取引先の方だ。一応、義理姉の親戚筋になる。義理母の遠縁の方だ」 一歩下がって一矢の後ろに隠れるようにしていた私が、一矢の隣に並んだ。お腹に力を入れ、優雅に微笑むことを忘れず、自己紹介をしてニセ令嬢としての責務を果たした。  悪だと思われても構わない。一矢のためだ。「伊織さんとやらに、娘の花蓮(かれん)を紹介しなくてはいけないな。娘は一矢君を大変慕っていたから、伊織さん

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